飛騨の山々が深く雪をたたえ、夏でも冷たい風が吹き抜けるこの地で、かつて三年もの飢饉が続いた時代があった。草の根まで食い尽くし、行き倒れが道ばたに溢れるなか、ひとりの大男が村々を荒らし回っていた。その名は与平。鬼の面みたいな顔をした、誰からも恐れられ忌み嫌われた男だ。けれど、ある母娘との出会いが、与平の凍りついた魂をゆっくりと溶かしていく。飛騨の言葉で語り継がれてきたような、温かくも切ない人間再生の物語を、どうぞお読みください。
第一章 飢饉の年と鬼の与平
いまから何百年もむかしに、飛騨の地であったはなしや。夏でも寒うて秋には大風が吹きあれ、米も野菜もとれなんだ年が、三年もつづいたことがあった。草の葉や根っこまで食いつくいて、飢(かつ)え死にする者もいっぱいおった。
大男で鬼の面みたいな顔した、四十近いひとり者の与平だけは、ぴんぴんしとった。自分の村やとなり村の衆から、あるかなしかの食い物を、おどし取ったり盗んだりしてや、自分だけ腹ほうず食っとったんや。村の衆からは、げじげじ与平、くそ虫与平と忌み嫌われて、いつも一人やった。
秋のある日のことや。よその村まで食いもの手に入れにいった与平は、途中で見かけたこともねえ、十二歳くらいの女の子に行き合った。なんにもとれん年やっていうのに、女の子はでかい柿のいっぱい入った、重たそうな背負籠(こざ)を背負ってよろけながら歩いとった。こざをのぞきこんだ与平は、
「おりょ? 柿やなけえ! こんな飢饉(がっしん)年にめずらしいこっちゃ。ありがてえ、もらうでな!」
女の子が返事をするまえに、脅し取った芋が入っとるふところに、手当たりしだいに柿をつめこんだ。それを見て、立っとるのもてきなそうなおとなや子どもたちが、女の子をとりかこんで、
「おりにもくりょよ」
「ひとつでええで、たのむさ……」
口ぐちにねだるのやった。
女の子はいやな顔もせんしと、みんなに分けてやった。こざはあっというまに、からっぽになった。そんでも女の子は、にこにこ笑っとった。与平は、女の子のうしろで、眩しい光がゆれとる気がした。
「どいう娘なんや? 他人(ひと)なんかにやらんしと、ぜんぶわりが食ってまえばええのによ。こいふになると知っとりゃ、おりがこざごともらっとくんやったわい!」
くやしそうに太い毛虫眉(まげ)を寄せると、芋と柿でふくらんだふところを、両手でおさえて歩きだいた。
道ばたにはおとなや子どもたちが、あんまり腹がへりすぎて、ごろごろ倒れとる。息をしとらん者も、ぎょうさんおった。そんなことには慣れてまっとる与平は、食い物くりょと枯れ枝みたいな手をやん出す、顔見知りたちには眼もくれんしと、河原におりてった。
流木あつめて火をおこし、指くらいのひょろひょろ芋を焼いて食いよると、ぼろぞうきんが風に吹かれて歩いとるみてえな、親子連れがやってきた。
「すんませんが、芋をちょっこし、分けてもらえんですろか?」
ひげが伸びほうだいで、あばら骨の浮きでた初めて会ったおっ父さんが、河原に膝をついて与平を拝むみてえにして、力のねえ声で言うのやった。五歳くらいの、枯れ枝みたいに痩せた坊を、やっとのことで抱きかかえたおっ母さんが、おっ父さんの隣に座りこんで、
「この子に、ひときれでええですで……」
ざんばらにほどけた髪をゆらして、なんども頭をさげた。
いかにもじゃま者が来たっていう顔で、親子をにらみつけた与平は、おっ母さんが言いおわらんうちに、名主の家からぬすんできた刀に手をかけた。
「うるせえ! わりたちにやってまったら、こっちが干上がってまうなけ。あっちけ、あっち行かんか!」
「しっぽのとこでも……」
おっ母さんが骨と皮の手を合わせた。
「ええい! うるせえって言っとるろ! はよ行かんと、痛てえめにあわせるぞ!」
引き抜いた刀が与平の眼みてえに光り、青い顔して眼ばっかでっかい坊が、かぼそい泣き声をあげた。親子の鼻先で刀をひとふりした与平のふところから、柿がころがりおちた。あわてて柿をふところに突っ込んだ与平は、照れ隠しやろか顔をしかめて舌打ちした。
「母ちゃん、もうええさ」
柿を見て泣きそな顔になったおっ父さんが、ふるえ声で言った。
「辛気くせえ! ひとの運まで悪うしてまうみてえな、情けねえ顔しくさって。食いものくれえ自分でさがさんけえ。さっさと行ってまえ! はよ行かんか、くそったれ!」
親子はなんにもしゃべらんしと、来るときとおなじに、ぼろぞうきんが風に吹かれとるみてえに歩きだいた。
「こんなときに他人なんかに、かまっとれるかってのよ!」
刀を鞘におさめながら、与平は遠ざかっていく親子の後姿を、薄笑いをうかべて見とるのやった。
芋を食べてまった与平は、柿もぜんぶたいらげた。おもしろ半分に種を口で吹き飛ばいてから、満足そうに屁をこいた。
腹がふくらんだら、ばか話でもしとなった。そやけど与平には、話し相手なんかだれもおらなんだ。仕方なく、まんまこう光る川を眼をほそめて眺めながら、
「宮のーおーォ、八兵衛は、酒好きでえー、トコショイト!」
へたくそな節まわしで、このへんの盆踊り歌をうたいだいた。歌なんてこれくらいしか知らなんだ。
「おっと、与平様も酒好きやぞ。一杯でええで飲みてえなあ!」
ひとり言なんやに、遠いとこにおるだれかに話しかけとるみたいな声やった。大声は生まれつきやった。
第二章 稗がゆをくれた母娘
それから何日かしたころや。
「さあて、稼げるうちに、かせいでおかんならんぞ。これから先、なにが起きるか知れたもんでねえでな」
与平は、ねぐらにしとる山の大けやきの樹洞(うろ)で、いつもみてえにひとりしゃべりすると、そとに出て刀を鞘から引きぬいた。
「この刀はええ仕事してくれるでねえけ。こいつを鼻先に突きつけるだけで、みんなが、〈堪忍(かんに)してくりょ〉って、悪いこともしとらんのに謝るでなあ」
笑い声をあげた与平は、刀に息を吹きかけて、着物の袖でぬぐった。
「使わんでも仕事ができるで、刃こぼれなんかひとつもねえねけ。名主の爺(じ)さが持っとっても、クソの役にもたたなんだこいつが、おりんとこに来たら、まちょうに働いてくれるもんや。ありがとよ」
こらえきれんて顔で、にたにたしながら刀を鞘におさめると、食いもののありそな家をさがしに、となり村まで出かけていった。
「食いもの出せばよし。出さなんだらこいつでバッサリや!」
刀がいろりの火に赤う光った。
押し入った家には、見るからに腹すかしとりそな十二、三歳の女の子と、青い顔して部屋のすみで横になっとる、おっ母さんしかおらなんだ。
いろりにかけてある鍋のなかで、なんやらぐつぐつとええ音をたてて煮えとる。与平はつばを飲みこんで、
「なに煮とるんえ? こんなときに、よう煮るようなもんがあるもんやん」
怖(おそが)い声をだいて、刀で鍋のふたをたたいた。
「稗のおかゆです」
女の子は怖(おすな)がることもなく、じっと与平を見あげとった。いつぞや、みんなに柿を分けてやっとった女の子やと気がついた与平は、
「ありがてえ。……食わせれ!」
きまりわるそな顔して刀を床に突き立てると、いろりの前にどっかりといずまかいた。
「わたしの分をあげますで、あとは、おっ母さんにあげてくれんさいな」
女の子が子どもにしては気丈な顔してたのんだ。
「よしよし」
ものわかりのよさそな返事やったけど、なに、口だけやった。はじめからぜんぶひとりで食ってまうつもりの与平は、いろりばたに用意してあった、からからに乾いて塩吹いとる梅干しをおかずに、ふーふー言いながら、熱い稗がゆを食いはじめた。
「酒は……ねえよな?」
「ねえです!」
女の子はきっぱりと言った。与平もばかなことをきいたと思ったのか、笑うとよけいに恐ご見える顔で照れ臭そうに笑うと、熱い稗がゆに息を吹きかけた。
すぐに食ってまった与平は、
「こりゃうんめえー! お代わりや」
女の子に茶わんをやん出いた。
「あとはおっ母さんの分やで、約束は守ってくれんさい。おっ母さんは、いっつも自分は食べんしと、わたしに食べさせてくらはるんですに」
女の子が涙声で言いよると、
「ええさ、ええさ。おりの分もあげないよ。この兄(あん)さまは、おりたちより腹すかいてござるんやろも」
痩せさらばえたおっ母さんが体を起こいて、息子をいたわるみてえな眼を与平に向けた。娘はなんでやらにこにこ笑うと、「はい!」と元気のええ返事をして与平から茶碗を受けとって、鍋に残っとるおかゆをぜんぶ盛ってやった。
びっくりした与平には、おっ母さんも女の子も、まんまこい光に包まれとるように見えたのやった。
ーーなんやと? おりたちよりも腹すかいてござる、やって? 笑わせるんでねえ。おりは、わりたちと違って、毎日食っとるんやぞ。
人のええ親子もおるもんやと、心のなかで小ばかにしながら二杯めを食いよると、与平は力いっぱい頭をどづかれた気がした。
ーーわりたちゃ、いまにもくたばってまいそなくせしとって、どして見ず知らずのおりなんかに、食わしてくれるのよ? どして、自分たちのこたほかっとって、おりみたいな刀ふりまわいてばっかおる性悪者を、かまってくれるんえ?
ひとからこんに親切にしてもらったことは、与平にとって生まれて初めてのことやった。これまで知りもしなんだ、熱いような痛痒いようなわけのわからんものが、胸のなかにあふれてきた。
「へん、笑わせるんでねえぞ!」
茶わんを持った手が、ぶるぶるふるえだいた。おかゆの残っとる茶わんを、手荒うござの上に置いて立ち上がった与平は、めまいでもしたみてえに片手をおでこに当てて突っ立っとった。そのままうつむいとった与平は、そばに突き立ててあった刀を引っこ抜いて鞘におさめると、礼も言わんしと荒々しい足音をたてて、家を飛びだいていった。
第三章 与平の涙、与平の慟哭
外は暮れかけとった。赤う染まった西の空を、カラスの群れが影絵になって、山のねぐらに飛んでいきよるのが見えた。ひとを睨みつけてばっかおった、与平のぎょろ眼からいきなり涙がこぼれて、ひげ面をつたいおちた。
涙なんて自分でも信じれなんだ。泣いたのは子どものときだけやと思った。
「ばかめ! なに泣いとるんや。泣くようなツラけ!」
頭をげんこつでなぐりつけると、そのげんこつでなんども涙をぬぐった。涙はあとからあとから湧いてくる。どしてこんに涙が出るんやら、わけがわからなんだ。
ーー小せえころから、身寄りのねえおりなんか、だれもかまってくれなんだ。おりは悪さばっかするようになった。おとなになったら、みんな、おりの顔見るだけで逃げていきよった。そやにあの二人は、こんなおりを……。
おりをかまってくれたのは、子どものころに死んでまわはった、おっ母さんしかおらなんだに。与平の眼におっ母さんの顔が懐かしく浮かんだとたんに、これまでより涙が湧いてきた。
それといっしょに、自分がしてきたことが次からつぎと心を通り過ぎていった。
「この稗取られてまったら、おりたちゃかつえ死にするしかねえんや! たのむに取らんでくりょ!」
寝たきりの婆(ば)さをかばいながら、不自由な体で足に取りすがってきた爺さを、蹴り飛ばいたときのこと。小せえ子どもを連れたおっ母さんに刀突きつけて、数えるほどしかねえ干し栗を奪い取ったときの、子どもみてえに泣いとったおっ母さんの顔ーー。
他人なんかどうなってもええと、自分だけに眼を向けて、弱い者いじめに明け暮れとった姿しか、浮かんでこなんだ。
刀を抜きはなった与平は、道ばたの木といわず草といわず、手当たりしだいに切りつけた。わけのわからんわめき声をあげながら、めちゃくちゃに刀をふりまわいとった。
道ばたに座りこんどるおっ母さんの膝に頭をのせて、ぼんやり空を見上げとった痩せさらばえた女の子が、与平に気がつくと声も出さんずに泣きだいた。
ーーおりは子どものときからひねくれたまんま、悪さばっかしてきたんやぞ! おりがしてきた悪さからしたら、生きてなんかおれんのや。
「そやけど村の連中は、おりみてえに、ひとりで生きとるわけではねかったろ。親きょうだいたちと笑ったり飯食ったり、いっしょに田んぼや畑に出とったなけ! おりにはだれもおらなんだんやぞ! 小せえころから、いろんな村をまわってものを盗んで、生きていくしかなかったんや」
与平はわめき散らすことしかできなんだ。
とっつかまって気を失ってまうほど棒で殴られたこともあった。子どものときに灯りもねえ暮れかけたぼろ小屋で、稲刈りでだれもおらん家から盗んできた干し芋を、一人で食っとったときのことを思いだいたら、またもや涙がとまらんよになった。
荒れたイノシシみてえな声あげて、刀をふりまわいとった与平は、急におとなしゅうなった。自分のしとることが、子どもじみたものに思えたのや。ひとりがどうのこうのと、自分のことばっか大事にして、恨みがましいことしか考えとらなんだ自分が、恥ずかしなったのやった。
刀を突きつけた相手が、みんな自分いがいの者のために、食いもの取らんでくりょと、いっしょうけんめい頼む姿が浮かんできたのや。もう飯なんか食わんでもええと与平は思った。
腹がへるなら、勝手にへりゃええんや。食えなんだら飢え死にするだけや!
与平は、自分の心が叫んどるのを聞いとった。自分さえ食えればええんやと、自分より弱そな人間から、刀でおどしてや食い物をかすめとる毎日が、つくづく情けのうなった。そこまでして生きて、なんになるっていうんや。与平は、人が違ったみたいなことを考えとった。
知らん間にあたりが急に静かになった気がする。与平には、生きとる者も死んどる者もおらん、はじめて見る景色に見えてきた。
空は夕焼けのまんま薄暗ろうなっていくし、道ばたにゃ飢えた人間や死人が、棒切れみてえにころがっとる。いっつもとおんなじ眺めやった。そんでもこれまでと違う静けさに包まれとった。与平はその静けさに叱られとるような気がしてきた。
またもや暴れだいた。
「悪さしかしてこなんだおりの命に、なんの意味があるってのよ!」
刀をふりまわし、わめき散らして足もとの草を蹴りつけた。
「おりは、どこへ行きゃええんや? どしたらええんや! ここで腹すかいとるひとたちや、死んでまわはったひとたちに、どやって謝ったらええんや!」
めのまえのやぶがこんもり茂っているのを見るだけで、泣きたくなった。
刀でやぶをめちゃくちゃに切りつけとると、
「この兄さまは、わたしたちより、腹すかいてござるんやろも」
さっきのおっ母さんの声が、不意に与平の心に響いた。手がすべって刀が足もとにころがった。おかゆを食わしてくれた母娘(おやこ)の姿が、はっきりと心のなかに浮かんできた。
刀を拾わまいと手をのばいた与平は、途中でその手を引っ込めた。腕組みしてながいあいだ刀を睨みつけとったが、
「へん、笑わせるんでねえぞ!」
無精ひげの伸びたあごをごしごしこすると、刀も拾わんずに歩きだいた。
その日から、与平を見た者はおらなんだ。
第四章 大井川の川越人足
なんとか、米や野菜がとれるようになった年の秋のことやった。三河や江戸に用があって出かけた、名主の跡取り息子の藤右衛門(とうえもん)さんが、富士山が近う見える大井川の渡し場で、偶然与平に会ったのやった。与平は旅人をおぶったり肩車して川を渡す、川越(かわごし)人足の仕事をしとったそうや。
「飛騨からどえれえ離れたとこで、たまたま会うなんて、神仏のおかげさまとしか思えんさ」
旅から帰ってきた藤右衛門さんは、村の寄り合いのときに与平のことを伝えると、神妙な顔をして手を合わせた。
藤右衛門さんの話によると、人足のたまり場の板の間に、きちんと膝をそろえて座った与平は、相変わらずの鬼の面みたいな、日焼けしたひげ面にぽろぽろ涙を流して、しばらくは何もしゃべれなんだそうや。それから故郷で自分のしてきた悪行を、心から謝ったしこや。
「村には帰るわけにゃいかんですけど、村の衆に、与平が心から謝っとったって……、くれぐれもよろしゅう伝えてくれんさりょ。こんなとこで、まさかおなじ村のひとに会えるなんて、思いもせなんだです。おかげさまで、村の衆に謝らんならんとずっと思っとった願いが、かないました。こんな……うれしいことはねえです」
頭をさげた与平の両側に、品のええおっ母さんと娘さんが、与平に寄り添うみてえにして、うれしそな顔して座っとるのが、藤右衛門さんだけに見えたそうや。
「人足の親方が言うには、べんこくせえ客は、川にどぼし込ませたりするけど、律儀そで金のなさそな客には、自分が損してまで、渡し賃をまけてやることもあるらしいさ。なんでも、フンドシに一文銭の入った布袋をくくりつけとって、向こう岸にわたると、貧しそうな客には、飯代の足しにしれとか言って、なにがしか渡すこともあるそうや。
仕事の休みの日は、村の爺さや婆さの肩をもんでやったり、力仕事を引き受けたりして喜ばれとるって、親方がありがたそうに言ってござった。与平のおかげで、おりまでもてなしてもらって、ありがたかったさ。
人足小屋の近くに住んどる娘さんが、あんに優しい人はおらんさって言っとったしなあ。ひとは、変わればかわるもんやなあ!」
しみじみした声で藤右衛門さんが言った。
ちょっとばかし乱暴なとこは残っとったけど、仕事仲間や村人たちからは、鬼の与平、仏の与平と慕われとったそうや。
飛騨弁・方言の解説
| 飛騨弁 | 意味・標準語 |
| なけえ | 〜じゃないか/〜だろう(驚きや確認の語気) |
| くりょ | くれ/ください(〜してほしいという依頼) |
| わり(わりたち) | お前(お前たち) |
| おり | おれ/自分(一人称) |
| がっしん | 飢饉(食べ物が極端に不足した状態) |
| かつえ死に | 飢え死に |
| てきなそう | しんどそう/つらそう |
| かんに | 堪忍/勘弁(「かんにしてくりょ」=許してください) |
| いずまかいた | どっかりと座った/腰を落ち着けた |
| まんまこい | まばゆい/まるまる明るい(眩しいほど輝いている様子) |
| どえれえ | とても/ひどく(程度の強調) |
| べんこくせえ | わがままな/横柄な(扱いにくい客などを指す) |
| どぼし込む | どぼんと落とす/投げ込む |
| しこや | 〜したのだった/〜したことだ(過去の事実を述べる語尾) |
まとめ
飢饉の飛騨を舞台に、奪うことしか知らなかった鬼のような男・与平が、ひとわんの稗がゆと母娘の温かさに触れて、静かに変わっていく物語でした。人は最も弱い瞬間に、最も深い優しさを持てるのかもしれません。遠く大井川の岸辺で、貧しい旅人にそっと銭を渡す与平の姿が、飛騨の山々の向こうに温かく浮かびます。鬼仏という言葉のように、人の心には鬼と仏が共に宿っているのだと、この物語は静かに語りかけてくれます。








